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科戸の風プロジェクト2021


「科戸の風プロジェクト」は、発足当時はCOVID-19を念頭に置いた「空気質の良い悪い」を取り扱ってきました。
しかしその一方、「室内環境」全体を把握するためには、暑さや寒さについても取り扱っていく方向に進化しました。
ここではその解析結果に移る前に、暑さや寒さといった人間の体感温度についても少し勉強しておきたく思います。

人間が感じる温熱環境の6要素

人間がある環境下において、暑い、寒いと感じる事はごく自然な事です。
温熱環境を表すための表現方法は幾つかあります。その中の代表は「気温」でしょう。気温とは文字通り空気の温度です。
しかし、暑さや寒さを感じる時には、他の因子も関係してきます。具体的にはまず、蒸し暑さを感じる”湿度”だと思います。 湿度は空気中の水分量を表す指標であり、概ね50%を堺に、それ以下であれば「乾燥している」、それ以上であれば「蒸している」と感じます。 但しここで湿度といっっているものは、学術的には「相対湿度」と呼びます。
「相対」という言葉が付いている理由は、空気中の水分量はその時の気温によって最大量(飽和と呼びます)が変わってくるからです。 これは例えば、コーヒーに砂糖を溶かすときに、コーヒーが熱いとより多くの砂糖が溶け、冷たい場合にはその逆となります。 これを空気中の水分量の事として考えれば、気温が高い時にはより多くの水分量が存在する事が出来、寒い場合にはその逆です。
そして、この水分量がその時の気温に対して存在出来る量に対して100%を超えると、”雨”であったり、”結露”といった現象が発生します。 要するに、我々が生活する上で一番気になるのは、この「ある気温に対する、空気中の湿度の比率」と言う事が出来ます。 そして、この値は空気の温度によって変化します。なのでこの指標は「相対湿度」と呼ばれる訳です。
その一方で、(気温に関係なく)その場でどれだけの水分量があるか、という値を質量として表す場合、これを「絶対湿度」と呼びます。 こちらの数値は物理学的には大きな意味を持つのですが、人間の感じる湿度とは、どうしてもズレが出てきます。 そのため、気象の分野では通常「相対湿度」を使って湿気の量を表す訳です。
また、風が吹けば人間は涼しく感じます。この風の事を「気流」と呼び、その速さを「気流速度」と言います。
もう一つ、あまり実感が無いけれど重要な指標があります。それは「放射温度」と言います。例えば、日中に日向に出ると熱く感じますが、 日陰に入ると涼しいでしょう。日向と日陰では空気の温度自体はあまり変わらないはずですが、この場合は日差しの強さが体感温度に影響している訳です。 同じ様な現象は室内でも起こります。室内ではあまり放射温度の違いを感じる事は少ないかと思いますが、それでも壁や天井からの放射温度の違いは、 人間の体感温度に大きな影響を与えます。
この様に、「気温」、「湿度」、「気流速度」、「放射温度」の4つの因子が人間の体感温度に大きな影響を与えます。 まずこの事を覚えておいて下さい。

その一方で、人間は走り回ったり運動したりすると、それだけで暑くなります。当然ですね。
また、暑く感じ始めると、誰でも服を脱ぎますね。
この2点については、学術用語としては「代謝量」と「着衣量」と呼びます。この2つの因子も、人間の体感温度に強く影響します。

総合すると、「気温」、「湿度」、「気流速度」、「放射温度」の4つの環境側の因子と、「代謝量」、「着衣量」の2つの人間側の因子が ある訳ですが、併せた6つの因子を、「温熱6要素」と呼びます。ここまでも重要な要素なので、是非とも覚えて下さい。

さてここで、「今日は暑いか寒いか?」と聞かれたとき、「本日の気温は何度で、湿度は何%、気流速度は・・・」などと言われても 結局のところ、我々が知りたいのはあくまで「今日は暑いか寒いか?」だけですよね。
なので、この6つの温熱6要素をまとめた形で表してくれる方がありがたい訳です。 そのため、これらの因子をまとめた形で表す、という取り組みはかなり昔から行われています。
その結果を温度の形で表す場合もありますが、もっと単純に「非常に暑い」とか、その逆に「非常に寒い」といった形で表現するやり方もあるわけです。 この「非常に暑い」から「非常に寒い」までを7段階で表す(非常に暑いを+3、非常に寒いをー3、どちらでも無いを0とします)方法を PMV指標と呼びます。このPMV指標は、上述の「温熱6要素」の値から計算するのですが、その式は複雑なので、ここでは省略します。 ここで覚えておいて欲しいのは、体感温度を表す時に、「PMV指標」はとても便利で、実際しばしば使われるものだ、という事ですね。

以上の事を踏まえて、「科戸の風プロジェクト」は2021年度以降、空気の汚染度だけでなく、暑さや寒さに関しても 解析を行っていき、そのことで室内の快適さを表現しましょう、という風に進化しています。

「科戸の風プロジェクト(2021年度)」の結果